赤枕十庵さんのブログでその発売を知り、「東京人」の圓朝特集を購入。パラパラとめくって圓生師匠(6代目)に関する記述がほとんど無いのに憤慨する。今、圓朝作品の録音を聴こうと思ったらまず圓生師匠でしょう。最も重要な人物だと思うんだが。
特集のメイン(冒頭)は歌丸と円楽。私の尺度で言えば、歌丸はまずくはないが特別にうまくもない噺家、円楽はまずい噺家であって、どうも釈然としない。
しかし考えてみれば、志ん朝師匠も死んでしまってうまい落語家っていったい今、幾人いるんだろうか。
権太楼なんかに圓朝について語らせてみたら、面白かったかも知れない。
さて、圓朝という人についてですが、僕は深く知るわけではないが、この人は「落語の神様」なんていう文脈で語られるべきではない。落語という世界の中に囲っておいてはもったいないような作家だ。
この人は、極めて近代的な感性を持って、近世的な枠組みの中で表現を行った人です。精神と科学についてずいぶん真面目に考えた人なんだろうと思う。
たしか宮武外骨主催のオカルト研究会みたいなのにも入ってたんじゃなかったか?
「真景累ヶ淵」の導入部だけ読んでも、明治期にこういう事を考えていた人がいたのか、と興味深い。
まぁ、全体的にはいい特集だと思いました。
あのねえ、嘆かわしいんだけど、みんな「志ん生病」にかかってる。
志ん生、良い噺家ですよ。でも、なんというか「オーヴァーグラウンドな名人」であってはならない、というか、言い方が難しいんですけど、安易に志ん生を中心にして落語を語るのは危険だと思うのです。
志ん生をほめておけば間違いない、みたいな空気が僕は嫌いです。だから敢えて圓生派である、というような。
関係ないけど、圓生師匠はCDの中で志ん生の「鰍沢」を痛烈に批判していて面白かったです。僕は鰍沢については、圓生師匠より馬生師匠の方が好きです。馬生師匠という人は人間の「不安」を描くのにかけて天才的だと思います。