金原亭馬生 | 三遊亭圓生 | 古今亭志ん生 |
圓生版は、どうも良くない。緊張と緩和の、特に緊張の部分がうまく描けていない。やはり言葉が過剰なのだろうと思う。説明的になってしまって、生と死の狭間にある恐ろしさや夢中さが無い。
ここはやはり馬生師匠(10代目)を推したい。馬生の語り口は常におだやかだが、しかし言葉少なな中に、非常に張りつめた空気というか、人間の「覚悟」のようなものを感じる。
あの口調と声は人情噺に良く、怪談に良い。滑稽噺も良いのだけれど、馬生師匠がやると、すこしブラックというか、ひねた笑いになる。これは好みの分かれる所、とは思う。
さて、圓生百席の「鰍沢」の後にはお決まりの芸談が収録されていて、これが面白かった。圓生師匠が志ん生師匠の「鰍沢」を痛烈に批判している。
この人は随分厳しいことを言っているが、名指しでここまで言うか、という感じで、芸の批判を超え、ほとんど人格批判みたいになっている。これは面白い。
そりゃ圓生師匠、芸は素晴らしいがこれじゃあ嫌われるよ、という。そこまで含めて圓生師匠が好きなわけですが。
で、ここまで批判されると志ん生版も聴きたい、というわけでいずれ購入します。